皆さんは「脂質を取りすぎると中性脂肪、LDLコレステロールなどの血中脂質の数値が悪化するから脂質を控える…。」
と意識をして脂質を減らしてはいませんか?でも、実は血中脂質を改善する働きがある脂質もあるんです。
今回はそんな脂質の解説を記事にまとめました。今のあなたに必要な脂質を見分けて上手に摂取していきましょう!
脂質とは?
脂質は水に不溶でエネルギーを産生することができる栄養素(エネルギー産生栄養素)の一つになります。
他の糖質、タンパク質は4kcal/gに対して9kcal/gと倍近いエネルギーを持っているので効率の良いエネルギー源となります。
しかし、脂質の中でもエネルギーにならない脂質も存在します。分類すると下の図になります。

単純脂質
単純脂質はグリセロールと脂肪酸が結合したものです。一般的なのは中性脂肪(皮下脂肪など)で、食べ物に最も多く含まれている脂質と言われています。重要なエネルギー源としての役割を持つ為、体脂肪として貯蔵されたり、血中にも存在します。
複合脂質
複合脂質はグリセロールと脂肪酸に加え、リン酸などが結合したものです。単純脂質に比べて量は少ない。複合脂質の1つであるリン脂質は脂質なのに水になじむ性質(親水性)となじまない性質(疎水性)のどちらも持ち合わせていて、細胞膜の材料としての役割を持っています。
誘導脂質(脂肪酸、コレステロール)
誘導脂質は単純脂質、複合脂質が分解されてできた物で脂肪酸、コレステロール、ステロイドなどがあります。
誘導脂質はエネルギー源、ホルモンの材料、生理活性物質のとしての役割を持っています。
脂質の役割

脂質は代表的な役割はエネルギー源ですが、物質ごとに細胞膜の材料、ホルモンの材料などいくつかの役割を持っています。
中性脂肪(TG)
中性脂肪は食べ物、食用油など食品中の脂質や、体脂肪(内臓脂肪、皮下脂肪)の大部分を占める物質ことです。
構造は全て同じで3本の脂肪酸がグリセロールと呼ばれる物質で束ねられた構造をしています。
中性脂肪の役割はエネルギーの産生と貯蔵、体温の保持、脂溶性ビタミン(ADEK)の吸収などがあります。
エネルギーの貯蔵と産生 ※グルコースに比べて10倍以上のエネルギー効率
体温の保持 脂肪は体温を保持するコートのような役割を持ちます
脂溶性ビタミンの吸収 脂肪に溶けないと吸収できないビタミンの吸収を助けます
※グルコースの好気性解糖38ATP:中性脂肪(脂肪酸(パルミチン酸)×3のβ酸化+グリセロール)419ATP=11
脂肪酸
脂肪酸は中性脂肪の構成要素の1つであります。
脂肪酸の構造は炭素、水素、酸素の3種類の原子で構成され、炭素が鎖状につながった構造をしています。鎖の長さや不飽和結合の有無や位置によって分類されます。
役割はエネルギーの貯蔵と産生、エイコサノイド(微弱なホルモンのようなもの)の産生などがあります。エイコサノイドの作用により「n-3系多価不飽和脂肪酸は身体に良い」と言われます。
エネルギー貯蔵と産生 中性脂肪と同じです
エイコサノイドの産生 鎖の長さ(単素数)が20の多価不飽和脂肪酸が代謝され発生します。
リン脂質
リン脂質は細胞の細胞膜,核膜やミトコンドリア膜などの生体膜を構成する物質です。
構造は中性脂肪(グリセロール+脂肪酸3)の脂肪酸3つのうち1つがリン酸+アルコールに変わった構造です。
特徴は親水性と親油性の相反する特性を持つと言う事です。これにより生体膜(細胞膜)の材料となります。
生体膜が正常に働かないと生活習慣病、脂質異常症などのリスクが増加します。
生体膜の材料 生体膜が働かないと脂質異常症や動脈硬化などのリスクになります。
コレステロール
コレステロールは動物の身体に存在する脂質でホルモン、胆汁酸を作る材料です。
役割はホルモン・胆汁酸を作ります。そのため過不足が脂質異常症、動脈硬化のリスクとなります。
コレステロールは人間の身体で作る事ができ2-3割が食事、7-8割が体内で生成され、ホルモンによってコレステロールのバランスが調整されていると言われています。
ホルモンの産生 ステロイドホルモンの材料となり生命維持に欠かせない物質を作る
胆汁酸の産生 脂質の分解に欠かせない物質を作る
生活習慣病の因子であるLDLコレステロール(悪玉)はコレステロールを肝臓から全身へ運ぶ働きを持ち、HDLコレステロール(善玉)は全身から肝臓へ運ぶ働きを持ちます。食品中では動物性脂質(肉)はLDLコレステロールが多く、植物性脂質(大豆、魚)はHDLコレステロールが多く含まれると言われています。
LDLコレステロール(悪玉) 肝臓から全身へコレステロールを運ぶ働きを持つ。動物性脂質に多く含まれる。
増加すると脂質異常症の原因となる。
HDLコレステロール(善玉) 全身から肝臓へコレステロールを運ぶ働きを持つ。植物性脂質に多く含まれる。
減少すると脂質異常症の原因となる。
脂質の摂取量と注意点

脂質の1日の摂取量は摂取カロリーの約20%〜30%と言われています。
脂質のカロリーは1gあたり9kcalですから計算式は【脂質の摂取量=摂取カロリー×0.2〜0.3÷9】で求められます。
男性2000kcalの場合 2000×0.2〜0.3÷9=45〜67g
女性1600kcalの場合 1600×0.2〜0.3÷9=36〜54g
脂質の摂取量の求め方
- 1日摂取するカロリーを計算しましょう(1日の摂取カロリー計算で検索すると調べられます)
- 摂取カロリーを【脂質の摂取量=摂取カロリー×0.2×0.3÷9】に代入し計算します。
脂質摂取の注意点
脂質を摂取する際の注意点は「脂肪酸バランスに配慮する、酸化していない脂質を選択する」を意識する事です。
脂肪酸のバランスに配慮する
現在の日本人の脂肪酸のバランスは理想系と比較して飽和脂肪酸が多く、一価、多価不飽和脂肪酸が少ないことです
ですので飽和脂肪酸を控え、一価、多価不飽和脂肪酸を多く含む食品を選択する配慮が必要になります。
理想の脂肪酸バランス(現状)
飽和:一価:多価 3:4:3(3.1:3.8:2.2)
酸化していない脂質を選択する
脂肪酸の中には酸化しやすい多価不飽和脂肪酸、酸化しにくい飽和脂肪酸が存在します。
酸化した脂質(過酸化脂質)を摂ると肌トラブル、疾患リスク上昇などの影響がある言われていますので酸化していない脂質を選択しましょう。
良い脂質を摂取するポイント

良い脂質を摂取するポイントは脂肪酸バランスに注意し、過酸化脂質やトランス脂肪酸を避けることがポイントになります。
1.理想な脂肪酸バランスを心がける
先ほど「飽和脂肪酸を控え、一価、多価不飽和脂肪酸を多く含む食品を選択する配慮が必要になります。」とお伝えさせて頂きました。少し生活習慣に意識を向けることで脂肪酸のバランスは改善できます。
下記のポイントを参考にしてみてください。
具体的な意識の方法
飽和脂肪酸(牛肉、豚肉、加工肉、乳製品)の摂取頻度が多くないか
一価、多価不飽和脂肪酸(魚介類、大豆製品)の摂取頻度が少なくないか

2.過酸化脂質、トランス脂肪酸を避ける
過酸化脂質、トランス脂肪酸を避ける理由は疾患リスクが上昇するからです。
過酸化脂質は細胞膜を傷つけ、機能を低下させます。さらには近くにある脂質も次から次へと酸化させると言われています。
トランス脂肪酸はLDLコレステロール増やし、HDLコレステロールを悪化させ、動脈硬化を招くと言われています。
この過酸化脂質、トランス脂肪酸は避けるに越したことはないと思います。
過酸化脂質の多い食品 長時間加熱された油(揚げ油)、空気に触れた脂質(ペットボトル容器の油)など
トランス脂肪酸の多い食品 市販の洋菓子、パン類、加工食品、ファストフードなど

個人的におすすめな食品【脂質】

メインに選ぶなら【鶏肉】
メインに選ぶなら鶏肉をお勧めします。その理由は肉類の中で飽和脂肪酸の含有率が少ないからです。
主要な肉類の中で飽和脂肪酸の含有率を少ない順に並べると鶏肉、豚肉、牛肉の順になります。部位によって脂肪酸バランスは変わりますが比較的鶏肉は飽和脂肪酸の含有率は低い傾向にあります。
お勧めな部位 ささみ、胸肉
お勧めの食べ方 煮る、茹でる、蒸す
積極的に摂取したい【魚】
「魚は体に良いと」言われますが、本当にその通りで魚は多価不飽和脂肪酸が多く、脂肪酸バランスが優れています。
魚は基本的に多価不飽和脂肪酸が多い傾向にありますので高頻度で摂取したい食材になります。
ただ、注意して欲しい点は変化(酸化)しやすいという点です。
酸化要因は空気に触れること、光に当たることなどです。その点からおすすめの食材は缶詰(水煮)、捌いてすぐの刺身などです。
お勧めの食材 鯖(サバ)、鰯(イワシ)、秋刀魚(サンマ)、鮪(マグロ)、鮭
お勧めの食べ方 缶詰、刺身、たたき、
個人的圧倒的オススメ【エゴマ油、アマニ油】
そして圧倒的にお勧めする食材がアマニ油、エゴマ油です。
お勧めしたい理由は脂肪酸バランスが多価不飽和脂肪酸(n-3系)に偏っているという点です。
他の食品では多価不飽和脂肪酸を摂取するにあたって、飽和脂肪酸を摂取してしまいます。しかし、このアマニ油とエゴマ油は70%以上が多価不飽和脂肪酸にあたるため。あまり言いたくない言葉ですが「これだけ摂取していれば大丈夫」な食材になり得てしまいます。
お勧めの食べ方 生食(加熱には向いていません)
注意点 酸化を防ぐ保存方法にすること(ガラス容器の物を選ぶ、直射日光に当てない)
加熱するなら【オリーブオイル】
最後は加熱に向いているオリーブオイルをご紹介いたします。
加熱に向いているオイルを選択する基準は『一価不飽和脂肪酸の含有率が多いか』です。
一価不飽和脂肪酸は多価不飽和脂肪酸に比べ変化しにくいと側面を持ちます。そのため加熱調理に向いています。
一価不飽和脂肪酸を多く含む油は他にもひまわり油、サフラワー油などが挙げられますが品種改良などされているものが多いため、選ぶのであればオリーブオイルがおすすめです。
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